走っていた。
寒空のもと。
師走。
風が冷たい季節だ。多くのライダーも冬眠の時期を迎える。
それでも僕は、風を切りさるように走っていた。
……クンッとスロットルをあける。
手や足を動かすのと同じように自然な動作。
寒くても、視界さえひらければ、それが走る理由になる。
視界が狭まり、コーナーが迫る。
次第に車体が倒れていき。
カーン。
金属音さえ聞こえてきそうな勢いでコーナーを切る。
……ニーグリップしている膝や腿が冷たい。
この勢いのままだと、直に氷を押し付けられているようにさえ感じる。
……アクセルをゆるめようか?
小さい弱気が生まれる。
一瞬の逡巡。
そのとき、対向車線のバスが斜線をまたいで現れた。
咄嗟にギアを2段落ちさせる。
激しいエンジンブレーキがかかって 高く悲鳴を上げる排気音。
が、頭は冴えている。冷静だ。クールにいけよ。
ハンドルバーを切りすぎない程度に傾ける。体を曲げ……
それが本当に一呼吸つくかつかないかのわずかな時間に行われ、
そして、単車はバスの右どなりをすり抜けた……
あ、あっぶねーーー!!!!!(^^;
文責:Kei
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